運用保守エンジニアはシステムの安定運用を支える重要な役割を担っています。
システム障害が発生した際の迅速な対応や、日々の業務を通じた継続的な改善が企業活動に欠かせません。
しかし、近年の技術進化、特にAIや自動化技術の急速な発展によって、業務内容や役割が大きく変化しつつあります。
「運用保守エンジニアはなくなるのでは?」という声も聞かれる中で、この職種の未来はどのようになるのでしょうか。
本記事では、現在の状況や技術の影響、そして将来の展望について詳しく解説します。
目次
自動化とAI技術の登場が与える影響
自動化や生成AIについて初学者向けの解説になります。
不要な方は読み飛ばしてください。(次テーマへのリンク)
メリット
現在、多くの企業がRPA(Robotic Process Automation)やAIOps(Artificial Intelligence for IT Operations)といったツールを導入し、運用業務の効率化を図っています。
これらの技術は以下のようなメリットをもたらしています。
- 単純作業の削減: 例えば、定型的なログ監視やシステムリソースの定期チェックといった作業が自動化されています。
- エラー検知と対応の迅速化: AIが異常検知を行い、場合によっては自動的に修復措置を実施することが可能です。
課題
一方で、自動化には新たな課題も存在します。
- 高度なトラブルシューティング: 自動化ツールでは対応できない複雑な問題が発生した際には、エンジニアによる原因の特定と対応が求められます。
- 自動化ツールの維持管理: 自動化されたプロセスやシステム自体を監視し、必要に応じて改良する作業が増えています。
運用保守業務の変化
昨今の急激なAIサービスの普及により運用保守エンジニアはなくなるのか!?
結論、運用保守エンジニアの仕事はなくなりません。
正しく表現すると、なくなる業務と生き残る業務が存在し、さらに新たな業務も生み出されます。
以下で詳しく解説していきますね。
なくなる業務と生き残る業務
なくなる業務
手動で行われる単純作業や、ルールベースで処理可能な業務がAIや自動化によりなくなる業務となります。
以下に挙げる中には、システムによって既に手動運用がなくなっているものが多々あります。
・エラー監視とアラート発報
・システムログやパフォーマンスの手動監視、アラート対応
・定型的なデータ入力、レポート作成
・月次レポートや統計データの収集、作成
・バックアップやリストアの手動操作
・スクリプトや自動化ツールで簡単に処理可能なタスク
・簡易なユーザーアカウント管理
・アカウントの追加、削除など、頻繁かつルール化された作業
・再起動や設定変更など、手順書に従って行える単純なトラブルシューティング
生き残る業務
システム全体を俯瞰した設計や、想定外のインシデントへの対応といった創造性や判断力を伴う業務が生き残る業務になります。
※新たに生まれる業務は赤字にしています。
・複雑な障害対応:システム全体の影響を考慮したトラブルシューティングや根本原因の特定
・システムのアーキテクチャ設計、見直し
・運用の最適化戦略の策定:自動化の導入計画やプロセス改善の提案
・セキュリティ管理:システムの脆弱性スキャンやセキュリティポリシーの策定
・緊急対応時の意思決定
・利用者や経営層への状況説明、影響範囲の分析、対応方針の決定
・新規システムやツールの導入と評価
・最新技術の評価や実装プロジェクトのリード
・チームや顧客との折衝、調整
・技術的な説明や関係者間の調整など、ヒューマンスキルが必要な業務
・異常検知のチューニング:AIや監視ツールの検知精度を高めるための調整作業
運用保守エンジニアが今後も活躍するためのポイント
運用保守エンジニアはなくならないとはいいつつ、必要とするスキルのレベルは間違いなく高くなっていきます。
必要とされるスキルセットの中で、今後のキーワードは自動化と生成AIです。
つまり、自動化や生成AIを導入するために必要な知識や経験が運用保守エンジニアが今後活躍するためのポイントとなっていくのです。
具体的には以下の3つのスキルを高めておくとよいでしょう。
- 自動化ツール作成
- インフラ構築(クラウド)
- 発想力
自動化ツール作成技術
今の運用保守エンジニアにとって自動化は最重要ミッションです。
コストを抑えて自動化をするとなると、外部サービスではなく自身でツールの開発をしなければなりません。
そうした中で必要となるのが、VBAやPythonなどのプログラミング言語を使いこなし自動化ツールを作成する技術です。
実際はプログラマーに委託したり、もはや生成AIにプログラミングを任せるという傾向にありますが、業務運用やメンテナンスを見据えた設計をするのは運用保守エンジニアの役割になります。
最低限でも今の技術ではどのような事ができるかを理解しておくことは必須。
加えて自身でプログラムを組み自動化ツールを作成できるようになると現場から重宝される人材になります。
インフラ構築技術
生成AIの導入には、何種類か方法があります。
大きく分けると以下の4種類です。
- 個人での環境構築なしでWeb上で使用できるものを利用(例:ChatGPT、Gemini)
- 単一ですべての機能を網羅するサービスを購入
- カスタマイズが可能な機能を備えたサービスを導入(例:Dify)
- 自身で作成し社内もしくはユーザに公開する
1においてはインフラ構築技術は不要です。
2、3の選択をするのであればインフラ構築スキルはかなり重要になってきます。
もちろん生成AIを導入するにあたりインフラ構築もセットで実施してくれるサービスは多数存在しますが、構築コストや運用コストがかかってしまうというデメリットがあります。
自身で構築してアプリケーションだけその土台に乗っけるというのがベストです。
それができなくても導入方針や設計をサービス提供者と考えていくうえでコスト・品質の最適化を図るうえでインフラ構築技術の基礎は学んでおきたいところですね。
4は言わずもがなインフラ構築技術がなければ必須です。
いくら良いサービスを作れたとしても提供範囲は一個人のみに限られてしまいます。
発想力
分解していくと、日々の課題を見つける力、それを自動化させるためのフローを作る論理的思考力、既存の技術で実現可能できそうかを判断する勘所。
これらを瞬時に考え付く発想力はとても重要ですね。
技術があっても自動化するタスクや生成AIの活用シーンが見つからなかったら意味ないですしね。
正直、上述した自動化作成技術やインフラ構築技術がなくてもこのスキルを極めるだけでもいいかも、、、と秘かに思っていたりします(笑)
その人がどのようなエンジニアになりたいかによりますね。
まとめ
「運用保守エンジニアがなくなる」という懸念は、現場の実情を十分に反映しているとは言えません。
運用保守エンジニアの仕事はなくなりません!!
むしろ、技術進化により新しいスキルや役割が求められることで、この職種はさらに進化していくでしょう。
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