「最近、部下の元気がない」
「相談が減った」
「突然の退職を告げられてしまった」
そんな経験がある管理職の方も多いのではないでしょうか。
部下との関係性に不安を感じていながらも、どうすれば信頼関係を築けるのかがわからない。
そんなモヤモヤを抱えている人にこそ、ぜひ読んでいただきたいのが、佐原資寛著『成長する組織を作る1on1マネジメント』です。
本記事では、1on1マネジメントの本質を解き明かすとともに、私自身が実践の中で共感したポイント、現場でのマネジメントにどう活かせるのかを交えてご紹介します。
目次
1on1の重要性について
まず、なぜ「1on1」がこれほど重要視されるのでしょうか?
厚生労働省の「令和元年雇用動向調査」によると、退職理由の第1位は「職場の人間関係」。
上司との関係が良好であれば防げた可能性のある理由が、上位を占めています。
つまり、マネジメントの質が離職リスクに直結しているということです。
その中でも1on1は、部下との信頼関係を築き、課題を早期に発見・共有できる最も有効な手段のひとつ。
形骸化した面談ではなく、対話を通じて部下を理解し、成長を支援するための時間として活用することが求められています。
1on1マネジメントの3stepについて
本書では、1on1を効果的に行うための3つのステップが紹介されています。
以下には各ステップの概要を記載します。
Step1:徹底的に聞く
部下自身が「どうなりたいか」「何に困っているか」「どんな支援が欲しいか」を引き出すことが第一歩。アドバイスよりも傾聴が重要です。
特に経験則でのアドバイスは1対1のマネジメントにおいては適切ではないので要注意。
Step2:価値観に合った共通目標の設定
一人ひとり異なる価値観に合わせて、「納得感のある目標」をすり合わせる。会社の方針と部下の目標の接点を見つける作業です。
Step3:支援者として認識してもらう
最終的には「この上司は自分を支えてくれる存在だ」と感じてもらうこと。ここまできて初めて、関係性が信頼に変わっていきます。
最も大事なのは心理的安全性
1on1の効果を最大化するには、前提として「心理的安全性」が欠かせません。
心理的安全性とは、部下が自分の考えや感情を率直に話せる状態のこと。これがないと、表面上の会話ばかりで本音にたどり着けません。
心理的安全性が確保されると、以下のようなメリットがあります
- チームに前向きな雰囲気が生まれ問題発見と対応が早くなる
- 部下のチャレンジ精神が高まる
- 「突然の退職」が起きにくくなる
逆に、心理的安全性が築かれていない職場では「無知だと思われる不安」「失敗を恐れる不安」などが支配し、意見も本音も引き出せません。
5つの意識構造タイプ別マネジメント
本書の中でも興味深かったのが、部下の価値観を5つのタイプで分類し、それぞれに合ったマネジメントを行うという考え方です。
すべての人間がどれか一つの方にピッタリ当てはまるわけではありません。
しかし、組織に属する人間としてどのような価値に重きを置いているかをとらえることはとても重要です。
その軸としてこの5つの意識構造タイプ別マネジメントは従業員満足度に大きく影響を与えると思います。
以下に、5つの意識構造タイプの概要を記載します。
タイプ別のマネジメント例については本の中で解説されていますので、ぜひそちらをご覧ください。
- 他者誘導型
自分を中心に考え自己の利益を追求するタイプ
組織においては権利や報酬にこだわる - 組織貢献型
自分だけでなく同僚や上司との関係性を重視するタイプ
組織においては会社や社会のルールや文化、習慣などを順守する傾向にある
日本人は「組織貢献型」が特に多いと言われており、「期待に応えること」を意識する傾向があります。 - 組織調整型
自分、同僚、上司だけでなく組織全体との調和を重視するタイプ
利己を抑えてでも組織内で承認されたいと考える - 理論運用型
自分のやり方で周りを動かして成果を上げたいタイプ
結果や利害を重視する - 正義調和型
自分と同僚、上司だけけでなく社内に限らず、同じ志を持つ仲間や他社と交流しながら目的達成のため働きたいタイプ
1on1を実施する上でのテクニック
1on1を継続して実施するためには、いくつかのテクニックも有効です。
ここでは本の中で解説されていた内、私自身が実践して効果があったと感じた内容をピックアップしています。
- 話の比率は部下7割・上司3割が理想
→ 話すのが苦手な部下には、要約して確認したり、問いかけを増やすと良い - 「はい、わかりました」に注意
→ 建前の可能性あり。「実はこういうことに困っているんじゃない?」と一歩深掘りを - 1on1の頻度は固定しない
→ 定例化による”やらされ感”を避け、状況に応じて柔軟に設定 - 部下からフィードバックをもらう
→ 部下自身が「上司に意見を言っていいんだ」という認識が生まれる
1on1を実施する前にしておきたい上司のマインドセット
1on1を実施する際、テクニックや「やり方」を身につけるだけでは必ず失敗します。
部下も人間なので、上司の言動の背景や感情を敏感に感じ取ります。
いくらテクニックを披露しても、自身に関心がない上司には部下はついてこないのです。
そのため、上司側にもマインドセットが重要になります。
その中でも、上司は「偉い」「教える側である」こういった固定観念は崩していく必要があります。
今後求められるマネジメントは、部下が自分に合わせるのではなく、「上司が部下に合わせてマネジメントする」なのです。
少し前の主流は全く逆の考えで、それに従って成長してきた方がマインドを変えることは簡単なことではありません。
部下とともに上司も成長していくという感覚で1on1を取り組んでみてください。
まとめ
『成長する組織を作る1on1マネジメント』は、単なる面談のテクニック本ではなく、マネジメントの本質と向き合う一冊です。
部下と真摯に向き合いたい。けれどどうしていいかわからない。そんな管理職の方に、まずは「聞く姿勢」と「共感の一言」から始めてほしいと思います。
私自身、実践してみて変わったと感じるのは、部下の表情や発言が少しずつ柔らかくなっていくこと。そして、部下のモチベーションや行動が目に見えて変わることです。
上司である自分が変われば、組織は確実に変わっていきます。
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